リトル クライ ベイビー。 ヒトリエ、本日11/4リリースの未発表ライヴ映像作品から「リトルクライベイビー」公開

楽天ブックス: HITORIE LIVE TOUR UNKNOWN 2018 “Loveless”

リトル クライ ベイビー

「ラギー先輩の誕生日ですよ!」 突如、女の絶叫が植物園に響き渡る。 昼寝をしていたレオナはあまりの騒音に飛び起きた。 逆光で良く見えないが、こんなことをしでかすのはオンボロ寮の監督生しかいない。 せっかく今日はラギーに用事があって探しにこないからゆっくり眠れると、お気に入りの寝床で寝ていたのに台無しである。 レオナは目の前に立つ監督生を睨みつける。 「ガルル…テメーどういうつもりだ」 「だから、ラギー先輩の誕生日ですって!」 「…まだ2週間前だろ」 この女、全然話聞かねえな。 眉間に皺を寄せてレオナはしぶしぶ返事をする。 しかし気のない返事がお気に召さない監督生はレオナの顔を覗き込んで更に捲し立てた。 「も!う!2週間前ですよ!なのに、何をあげたらいいのか全然決まらないんですよ!」 頭痛がする。 この草食動物はたかがそんなことでレオナの睡眠を邪魔したのか。 レオナは再び寝る姿勢に入る。 しかし監督生はレオナの腕を渾身の力で引っ張って起こそうとする。 「お願いしますレオナ先輩!知恵を!」 「知らねえ。 俺は関係ねえ」 「関係なくないです!レオナ先輩だって普段あんなにお世話になってるじゃないですか!」 「自分で考えろよ…」 監督生だって色々と考えた。 でもラギーは基本的に、欲しいものは自分でお金を貯めて買うタイプなのだ。 モストロ・ラウンジを始めとして色々なバイトをしていて、今現在そこまでお金に困ってなさそうだし、それとなくラギーに聞いてみても直近で欲しいものはないと言われてしまった。 ならば手料理や手作りグッズか。 いや、ラギーの家事スキルはカンストしている。 そんなプロの主夫に監督生の作った拙いものをプレゼントするなんてもはや申し訳ない。 聞いてもいないのにラギーへのプレゼント案を語られてレオナは辟易とする。 そうやって語るくせに、そのどれもがあまり納得いっていないようだった。 「ラギー先輩が何がほしいのかどうしても分かりません…」 「…ラギーはお前からなら何でも喜ぶんじゃねーの」 やかましいのがいては流石のレオナも寝付けない。 諦めて体を起こして胡座をかく。 一応は聞く姿勢である。 「そう、かもしれないですけど!目一杯喜んでほしいんですよ私は…」 「テメーをプレゼントしたら良いんじゃねーか」 ハンと鼻で笑うレオナ。 テメーとは?とぽかんと呆けた監督生のネクタイをするりと解く。 そしてそのまま監督生の頭にかけてニヤリとする。 「私を食べてください、ってなァ」 すると監督生は、茹で上がったみたいに見る見る真っ赤になった。 陸に上がった魚のようにぱくぱくと口を開閉させている。 色気も何もあったもんじゃねーなとレオナはくつくつと笑う。 「ま、真面目に考えてください!」 「大真面目だっつの。 まだまだお子様のお前には無理な話だったか?」 ああ言えばこう言うライオンである。 そも、口ではこの賢い男に勝てやしない。 監督生はむくれてレオナを睨みつけるが、レオナはどこ吹く風といった様子であくびをしている。 穏やかな午後の昼下がり。 ラギーの誕生日大作戦は前途多難であった。 [newpage] 最近、監督生がおかしい。 春になると変な人が増えるらしいが、監督生もその類いなのだろうか。 ラギーは2、3日前から様子のおかしい監督生を眺めながら考える。 飛行術はラギーの得意分野だ。 マジフトには不可欠の技術だし、その辺の学生よりは上手く乗れる自信がある。 だから、監督生はいつもラギーがホウキに乗ると格好良いだのと騒いできていた。 それなのに、昨日今日と全く寄ってこない。 今だって、ラギーの方を見ることなく、エースと楽しそうに話している。 それが面白くなくて、ラギーはホウキに乗ったままスーッと監督生に近づく。 「なーにしてんスか。 サボってるとバルガス先生に怒られるッスよ〜」 「あっ、ヤベ」 すぐにホウキに跨りバルガスの方へ飛んでいったエースを横目に、ラギーはホウキから降りて監督生をじっと見つめる。 突然穴が開くほど見つめられて、監督生の体温は急上昇する。 ラギーの誕生日にはサプライズパーティーをしたいので、ボロを出さぬようにラギーとの接触を控えていた。 その反動か、今目の前にいるラギーが輝いて見えて仕方がない。 混乱しすぎて、いやラギーはいつも輝いているが?と謎の反論までしてしまう。 赤くなったり青くなったりする監督生。 やっぱり明らかにおかしい。 確信したラギーは監督生の頬に手を添えて目を合わせた。 怯える小動物のような目をしている。 「アンタ、オレになんか隠してることないッスか?」 ドキリと監督生の心臓が跳ねた。 しかし、平静を装ってラギーに笑いかける。 「全然!何にも隠してなんかないですよ!」 しかし残念なことに、引きつった笑顔であった。 ラギーは今度は監督生の頬をつまむが、監督生は意地でも話すものかと唇を引き結ぶ。 柔らかな頬を堪能しながらラギーは舌舐めずりをする。 何かを隠していることは間違いない。 言わないなら…暴くまでだ。 まあでも…果報は寝て待てって言うだろ?」 「え?監督生?い、いや…何も知らないっすよ!」 「監督生さん?契約はしてませんよ。 ふふ、彼女にも色々あるんじゃないですか」 「ふにゃ?子分が何してるか?そんなのオマエの…い、言わないんだゾ!」 ラギーはありとあらゆる伝手から情報収集をした。 そうして一つの結論に辿り着く。 すなわち、監督生は元の世界に帰ろうとしているのではないだろうか、と。 ラギー以外の人間は知っているのにラギーだけが知らないこと。 いつでも真っ直ぐにラギーと向き合う監督生が秘密にすることなんて、それしかないと思えた。 ラギーは妙な確信を得て項垂れる。 監督生が元の世界に帰ってしまう、そのことを考えない日はなかった。 だけどそれはもっと先の話だと、遠い未来の話だと、思っていた。 思っていたかった。 監督生が自分にだけ告げなかったのは正解だなとラギーは乾いた笑いをこぼした。 帰ってほしくない。 ずっとそばにいてほしい。 たとえ監督生が望まなくても。 [newpage] ついにラギーの誕生日がやってきた。 これまでジャックに協力を仰ぎ、レオナを脅し、エースたちやグリム、アズールにまで頼み込んで頑張ってきた。 おかげで向こう一ヶ月のラウンジバイトが決定したが、些細なことである。 監督生は晴れやかな気分でオンボロ寮の窓を開ける。 雲ひとつない青空、晴天!絶好のサプライズ日和だ。 今日のことを思うと寝付けず、寝不足気味ではあったが、気合いだけは十分と拳を握る。 しかし突然、監督生の耳に、ドンドンドン!と強く扉を叩く音が聞こえてくる。 こんな朝っぱらから一体誰だと扉を開けるとラギーがいた。 これからサプライズを仕掛ける相手の、まさかのご登場である。 監督生の思考は止まった。 ただ呆然とラギーを凝視する。 急いで来た様子のラギー。 額に汗を滲ませている。 涼やかなグレーの瞳に燃え盛るような熱を感じた。 はあっと熱い吐息がかかったかと思えば、監督生はラギーに引き寄せられていた。 「ラギー先輩…?」 ラギーは困惑する監督生の肩口に顔を押し当てる。 ふわふわの耳が頬を撫でて監督生はくすぐったさに身を竦ませたが、それすらも封じるほど強く抱きしめられる。 「幸せになって」 泣きそうな声だった。 ラギーの体が震えている。 「えっ?」 「誰よりも、アンタの幸せを願ってます」 「待って、ラギー先輩!何の話ですか…?」 「何って…監督生さん、帰っちゃうんスよね」 監督生は唖然とした。 今日はラギーのバースデーである。 それ以上でも以下でもない! 「帰らないですよ!?」 えっという呟きと共にラギーが顔を上げる。 潤んだ目。 泣かせたのは誰だ?自分か、クソ! 監督生はラギーに手を伸ばす。 滲んだ涙を優しく拭ってやって笑いかける。 「もう、勝手に帰さないでください。 私がラギー先輩がいない世界で生きていけると思いますか?」 「で、でも…監督生さん、最近ずっと様子がおかしいじゃないッスか…」 「それは…」 言い澱むとラギーに絶望したような顔をされる。 それを見て、監督生もいい加減諦めた。 そもそもがラギーを喜ばせるための計画だ。 泣かせるなんてもってのほか! ぎゅむとラギーの頬を両手でつかんで、監督生は声を張り上げた。 「ラギー先輩!今日は何の日ですか?私はずっと、今日のために準備してきたんです」 「突然なんスか?」 「…内緒でお祝いしようと思って、色々準備してたんですよ。 ねえ先輩、今日は誰の誕生日ですか?」 太陽が昇ったのだろう、オンボロ寮に光が差し込む。 眩しさに目を細めたラギーだったが、その目が徐々に驚きに丸くなる。 「オレの、誕生日ッス…」 「ふふ、お誕生日おめでとうございます、ラギー先輩!」 空は晴天!キミに涙は似合わない! 監督生はにっこり笑った。 [newpage] 「それにしてもラギー先輩、『幸せになれ』って…。 私が元の世界に帰っても平気なんですか?」 「平気なわけないッスよ!」 むくれた監督生にラギーは慌てて弁解する。 「最初はアズールくんと契約してでも止めてやろうと思って、ラウンジまで行ったんス。 でもいざ契約!って時に、ふとアンタの顔が浮かんで」 「私の顔?」 「アンタ、泣くだろうなぁって思ったら、気づいたら契約を断ってたッス」 恥ずかしそうに笑って、ラギーはおもむろに真面目な顔をして監督生の手を握る。 「オレは嫌われ者のハイエナで、」 「はい」 「生きる為にどんなことだってしました」 「はい」 「アンタに言えないような後ろ暗いことだって」 項垂れるラギー。 ラギーはずっと、自分の出自を恨めしく思っていたが、監督生に出会ってからはその思いが日増しに強くなっていた。 自分とは違う、愛されるために生まれてきたような女の子。 事実、ナイトレイブンカレッジの誰もが監督生を慈しむ。 あのレオナでさえ例外ではない。 自分の手を握り返してくれる監督生の手を見つめる。 苦労を知らなそうな柔らかな手。 知らなくていい。 このまま、辛いことなんて知らないまま幸せになってほしい。 だから監督生は元の世界に帰るべきだ。 ラギーはあの時、心からそう思ったのだ。 「でも、」 ごめんなさいッスと謝るラギーに、言い返してやろうとした監督生だったが、ラギーの強い視線に言葉を飲み込む。 「もうアンタのこと、離してやれそうにないッス」 ラギーは深く息を吸って万感の思いを込める。 「元の世界になんか帰らないで。 オレが全力で幸せにするから」 監督生の額にラギーの熱が触れる。 そのまま、こめかみ、目蓋、鼻先、頬へと唇が降りそそぐ。 くすぐったさに微かに笑った監督生を見て、ラギーも口端を上げる。 笑ってられるのも今のうちッスよ、とその唇にキスしようとしたところでーーーー。 「玄関先でイチャイチャするのはやめてほしいんだゾ…」 グリムの邪魔が入った。 空気読めよと思わなくもないが、監督生が声を上げて笑うのでラギーもシシシッと笑う。 ひとしきり笑って、学園に行く準備をしないと、とオンボロ寮に戻ろうとした監督生だったが、思い出したように振り返る。 ラギー先輩、と小さく呼ぶ声と共に、腕が引かれて目線が同じになる。 「来年の誕生日は覚悟してくださいね!」 そうして監督生は、チュ、とラギーがし損ねたキスをした。 ぽかんと惚けるラギーを見て満足気に破顔して扉の向こうに消えていく。 「あーほんと、敵わないッス…」 後には、首まで真っ赤に染めたハイエナだけが残されたのだった。 [newpage] 監督生:前作の監督生のつもりで書いてます。 猪突猛進ポジティブ女。 ラギー・ブッチ至上主義。 プレゼントで何をあげたかご想像にお任せします。 来年はもっと頑張る予定。 ラギー:監督生のことが好き。 好きだからこそ、幸せになってほしくて元の世界に帰そうとしたが、もう離さないッスよ。 来年も当たり前に一緒に居てくれるんだな、ってにやけてる。 レオナ:はよヤッちまえ、と思っている悪いおぢたん。 果報は寝て待てって何やねん。 アズール:ラギーが勘違いしているのは分かっていたけど、それはそれ。 労働力はいくらあっても困らないので。

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リトル クライ ベイビー

ヒトリエ UNKNOWN-TOUR 2018 "Loveless" at EX THEATER ROPPONGI• 01 NAI. 02 深夜0時• 03 インパーフェクション• 04 ワンミーツハー• 05 日常と地球の額縁• 06 バスタブと夢遊• 07 イヴステッパー• 08 Loveless• 09 モノカラー• 10 目眩• 11 センスレス・ワンダー• 12 アンハッピーリフレイン• 13 ソシアルクロック• 14 Namid[A]me• 15 トーキーダンス• 16 アンノウン・マザーグース• 17 絶対的• 18 踊るマネキン、唄う阿呆• 19 リトルクライベイビー ヒトリエ 全国ワンマンツアー2017 "IKI" at STUDIO COAST• 01 心呼吸• 02 ワンミーツハー• 03 インパーフェクション• 04 Daydreamer s• 05 イヴステッパー• 06 るらるら• 07 doppel• 08 極夜灯• 09 さいはて• 10 KOTONOHA• 11 ハグレノカラー• 12 5カウントハロー• 13 踊るマネキン、唄う阿呆• 14 シャッタードール• 15 リトルクライベイビー• 16 目眩• 17 カラノワレモノ• 18 センスレス・ワンダー• 19 SisterJudy• 20 モンタージュガール MOVIE.

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