白川 日銀 総裁。 浜田宏一「教え子だった白川方明日銀総裁はどこで道を誤ったのか」()

白川方明

白川 日銀 総裁

日本銀行金融研究所主催2012年国際コンファランスにおける開会挨拶の邦訳 日本銀行総裁 白川 方明 2012年5月30日• はじめに おはようございます。 今年も日本銀行金融研究所主催のコンファランスに海外中央銀行や国際機関の関係者、内外の学者の皆さんの多数のご参加を頂き、大変嬉しく思うとともに、日本銀行の同僚を代表して、心から歓迎の意を表します。 今年のコンファランスのテーマは、「人口動態の変化とマクロ経済パフォーマンス」です。 このテーマを議論する上で、日本ほど格好の事例を提供している国はないと思います。 日本の総人口は2007年をピークに、生産年齢人口は1995年をピークに減少に転じています。 老齢人口比率、すなわち、総人口に対する65歳以上の人口の比率は1990年の12%から2010年には23%と急速に上昇しています(図表1)。 過去20年間、日本経済の成長率は徐々に低下してきました。 この期間の前半の低迷は主としてバブル崩壊の影響でしたが、後半期の低成長には、急速な高齢化進行という人口動態の変化が様々なルートで影響を与えています。 このことを示すために、私がしばしば引用する事実は、過去10年間の日本の成長率の国際比較です。 生産年齢人口、すなわち、15歳から64歳までの人口一人当たりGDP成長率をみると——これは短期的には人口動態の変化にあまり左右されない指標ですが——、日本はG7諸国の中では最高です。 しかし、高齢化に伴う生産年齢人口比率の低下の影響を受ける、総人口一人当たりの実質GDP成長率はG7諸国の平均並み、そして、総人口の減少の影響を受ける実質GDP成長率は下位グループに位置しています(図表2)。 新古典派成長理論では通常、人口と生産年齢人口の区別はなされませんが、この違いを明示的に考慮することなしには、日本が現在直面しているような問題は分析できません。 過去10年以上にわたって、海外におけるマクロ経済政策の論議に当たっても、日本の経験は頻繁に引用され、様々な政策提案もなされていますが、人口動態の違いを考慮することなく一般的な結論を引き出すと、時として、ミスリーディングなものとなる危険もあります。 人口動態の変化に伴う問題は、日本だけでなく、諸外国にとっても今後、重要性を増していくと考えられます。 例えば、中国の生産年齢人口の増加率は1990年から減少傾向をたどり、2020年にマイナスになると予想されています(図表3)。 他のアジア諸国にとっても、高齢化はやがて到来する現実です。 欧州をみると、ユーロ圏周縁国では、2007年までは移民流入が人口増加に大きく寄与してきましたが、金融危機後に債務問題が深刻化する中で、移民の流入テンポが鈍化、ないし流出が進み、足もとでは人口成長率の鈍化や減少から潜在成長率の低下に直面している国もみられます。 人口動態の変化とマクロ経済のパフォーマンスというテーマの下で議論すべき点は数多くあり、私の短い挨拶ですべてをカバーすることはできませんが、以下では、いわば「人口問題先進国」として、日本の経験の幾つかをお話しします。 最初に、日本の人口動態の変化に関する事実を簡単に説明し、次にそのマクロ経済のパフォーマンスへの影響を取り上げます。 最後に、人口動態の変化に伴う課題について触れてみたいと思います。 日本の人口動態の変化 最初に、日本の人口動態とマクロ経済のパフォーマンスの問題を考える上で、私が重要と考える事実を4点指摘します。 第1は、日本の人口増加率や生産年齢人口は、かつては非常に高かったという事実です。 今では信じられないことですが、第2次世界大戦直後は日本では人口過剰が問題とされ、実際、ブラジルへの移民船での移民は1952年に再開され、1973年まで続きました。 日本の高度成長は1950年代半ばに始まり1970年代初頭に終わったとされていますが、生産年齢人口の増加は自由貿易体制と並んで、高度成長を支えた大きな要因でした。 図表4は高度成長の始まった時期と終わった時期における日本の年齢別人口構成を示したものですが、生産年齢人口が急速に拡大していたことが分かります。 ちなみに、この間の人口増加率は1. 3%、生産年齢人口増加率は1. 9%でした。 国際的にみても、当時は日本の総人口や生産年齢人口の増加率は先進国の中で最も高い、ないし高いグループに属していました。 第2は、日本の人口や生産年齢人口の増加率の低下は、国際的にみて際立ったスピードであったという事実です(図表5)。 総人口の動向を規定する最も大きな要因は、出生率と死亡率ですが、出生率は1950年代から急激に低下し、現在は1. 39と、先進国の中では最も低位グループに属しています。 死亡率もまた、第2次世界大戦後、急激に下落し、千人当たり死亡者数は1979年に6. 0まで低下しました。 その後、徐々に上昇し、2010年では9. 5人となっています。 第3は、興味深いことに、上述の出生率の低下はかなり長い期間にわたって一時的な現象とみられ、通常5年おきに再計算される公的機関によるわが国の出生率予測は公的年金等の設計の基礎データとなりますが、事後的には1976年以降、ほぼ一貫して過大推計となっていたという事実です(図表6)。 実際、出生率が2を大幅に下回るという前提が置かれたのは1992年の推計が初めてで、それまでは、出生率は長期的には2に復帰していくという前提が常に置かれていました。 人口動態の変化に関する事実への認識の遅れに加え、そうした事実の持つ意味の認識はさらに遅れました。 その結果、予想される人口動態の変化に対処した措置が採用されるにはさらに時間がかかりました。 これが人口動態の変化に関して私が指摘したい第4の事実です。 ちなみに、政府の1992年度の国民生活白書は「少子化社会の到来、その影響と対応」という表題を冠していますが、振り返ってみると、この頃はバブル崩壊の深刻な影響に苦しんでいた時期でした。 このため、一般国民はもとより、エコノミストの間でも、高齢化や少子化といった人口動態の変化が日本経済に対して持つ意味の重さを、後に我々が実感するほどには、十分には認識できていなかったように記憶しています。 この点について、新聞記事数から確認しますと、高齢化や少子化に関連する記事の数は、1990年代以降増加基調にありますが、これがバブルや不良債権をキーワードとする記事の数を上回るようになったのは、生産年齢人口が減少局面に入って凡そ10年も経過した2000年代半ば以降のことです(図表7)。 人口動態の変化が日本の経済に与えた影響 次に、人口動態が日本のマクロ経済のパフォーマンスに与えた影響という観点から、経済成長率、物価上昇率、経常収支の3点について、整理したいと思います。 経済成長率 まず、人口動態の変化が日本経済に与えた影響のうち、最も重要な経済成長率に与えた影響を取り上げます 1。 ソローの成長理論モデルでは、全人口が労働力だと仮定されています。 この場合、労働節約的な技術進歩のある場合の長期均衡状態では、一人当たり成長率は技術進歩率によって決まり、マクロの成長率は人口成長率と技術進歩率、すなわち労働生産性増加率の和になります。 日本のように高齢化から生産年齢人口が減少し始めた経済では、仮に労働力率を一定とすると、労働力人口も減少し労働供給が制約されるため、労働節約的な技術進歩がない限り資本収益率が低下し、マクロの成長率には下押し圧力がかかります。 過去10年間の日本の現実の状況に当てはめて言うと、労働力人口は年率0. 3%の減少、労働生産性は0. 8%の増加、成長率は0. 6%ということになります 2(図表8)。 ただし、このような分析は高齢化や人口減少の影響を考える上での第一次近似としては有用ですが、政策を考える上では、以下で述べるように、他の要因を取り込んだもう少し現実的なアプローチが必要です。 第1は、労働力率が長期的に変化する可能性です。 例えば、日本の女性の労働力率は国際的にみて低く、特に30歳代の労働参加率が一旦低くなるという「M字カーブ」の傾向が顕著であり、現在でもそうですが、近年、そうした傾向は徐々に変化しています(図表9)。 第2は、総人口一人当たりの成長率と労働力人口一人当たりの成長率の違いです。 ソローの成長モデルでは、全人口が生産年齢期にあり労働力人口に一致すると仮定されていますが、高齢化が進むにしたがって両者の乖離は大きくなります。 非労働力化した高齢層のウェイトが高まっていく過程では、総人口一人当たりの成長率は、労働力人口一人当たりの成長率よりも低くなります。 生産要素の供給力という観点では、労働力人口一人当たりの成長率が重要ですが、財やサービスの需要を支える消費者の平均所得という観点では、総人口一人当たりの成長率の方が重要です。 前者の成長率が高くとも、後者の成長率が低下すれば、需要削減圧力が加わり、経済成長率を押し下げると予想されます。 第3は、いわゆる「スペンディング・ウェーブ」の影響です(図表10)。 日本の1980年代後半の資産バブル発生のひとつの要因は、この時期にベビーブーム世代が住宅購入を最も活発に行う年齢層となり、住宅購入を活発化したことです。 同様に、1990年代後半以降の自動車等の国内販売の減少には人口動態の変化も大きく影響しています。 一方で、高齢化の進展は医療や介護といったサービスへの需要増加を意味します。 現在、日本の消費のうち、約40%は60歳以上の年齢層によるものであり、今後、その比率はさらに上昇すると予測されています。 そうした潜在需要の増加に応じて供給体制が変化すれば、潜在成長率の低下は緩和される筈です。 第4は、財政バランスの変化を通じる影響です(図表11)。 急速な高齢化は財政赤字の拡大をもたらす大きな要因となりました。 言うまでもなく、高齢化の進展は、成長率の低下に伴う税収の伸び率低下や、医療、介護、年金等の社会保障関係費の増大を通じて、財政赤字の拡大要因となります。 また、将来の財政バランスに関する不確実性が高まれば、現役世代の消費抑制要因となり、成長を下押しする可能性があります。 さらに、政治プロセスを通じる影響も考えられます。 高齢化は当然のことながら選挙民の平均年齢の上昇を意味しますが、高齢者の投票率が高く、また、高齢者が社会保障制度の維持の選好を有するとすれば、その程度に応じて、財政赤字が増大する傾向が生じます。 第5は、金融資産選択を通じる影響です(図表12)。 特に、経済成長に欠かせないリスク・マネーの供給という観点からは、高齢者の増加が家計の金融資産の選択を通じて、どのような影響を与えるか検討する必要があります。 しかし、家計の金融資産選択は、年齢だけでなく、労働所得の動向や、住宅の選択などと同時に決定される問題です。 日本については、高齢者になれば他の条件を一定として株式保有が増えるのか、あるいは株式を売却し、国債などの安全資産選好を強めるのか、といった点について、マイクロ・データを用いた分析結果が十分には蓄積されていません 3。 今後の研究が期待される分野です。 なお、以上の分析は日本経済全体への影響に焦点を当てていますが、実際には、高齢化や少子化といった人口動態の変化も経済への影響も、均一ではなく、人口増加率や生産年齢人口、高齢化比率のスピードは地域によって大きな違いがあります(図表13)。 この違いは各地域の成長率の違いをもたらすひとつの要因となっていますが、各地域の財政収支や金融機関経営の違いももたらしています。 1 人口動態の変化が経済成長率に与える影響については平田 [2012]参照。 2 四捨五入を行っている関係上、各寄与度の合計が、GDP成長率と一致しない。 3 この点については、Fujiki, Hirakata and Shioji [2012]参照。 物価上昇率 人口動態とマクロ経済のパフォーマンスとの関係で、次に取り上げる論点はデフレとの関係です。 人口動態とデフレと言うと、一瞬、その論理的な関係が理解しにくいかもしれませんが、先進国のデータを横断的にみると、興味深いことが分かります。 すなわち、2000年代の10年間について先進24ヶ国の人口増加率とインフレ率を比較すると、両者の間に正の相関が観察されるようになっています 4(図表14)。 この事実は、マネーの増加率とインフレ率の相関が先進国で近年弱まってきていることと対照的です 5(図表15)。 この関係をどのように解釈すべきでしょうか。 人口変動とインフレ率の相関に関しては、両者が景気循環を起点として共変動している側面を反映している部分があります。 例えば、欧米では、景気の変動が需給ギャップを変動させてインフレ率を変動させると同時に、移民の流出入によって人口の増加率が変化するよう作用した側面があります。 しかし、日本のように、移民の流出入が人口変動に及ぼす影響は無視できる国では、景気変動が人口変動をもたらした度合いは小さいと考えられます。 その日本についてみると、1990年代以降、インフレ率と人口変動率の間に正の相関関係が観察されるようになっています(図表16)。 これには、高齢化に伴う経済の所得形成力の低下も影響してきたと考えられます。 日本の経済成長率については、バブル崩壊や急速な高齢化、生産性の伸び悩みなどを背景に、総人口一人当たりの実質GDPの成長率が1980年代の約4%から近年は約1%まで大きく低下しています(図表17)。 こうした趨勢的な成長率の低下は、今後さらに高齢化が進むと予想される人口動態のもとで、人々の中長期的な成長期待を低下させ、家計の恒常所得を下押する可能性があります。 潜在成長率の低下自体は供給力の伸び悩みであり、恒常所得の低下に伴う需要減少は供給減少と対をなす現象であることから、その限りで物価に対しては中立的です。 しかし、先ほども触れたように、人口動態の問題は当初はあまり意識されず、ある段階から強く意識されるようになりました。 その段階で、将来起こる成長率の低下を先取りする形で、需要が減少し、物価が下落する一因となりました 6。 この間、米欧先進国では、金融危機の影響から、総人口一人当たりの実質GDPの成長率が日本とほぼ同じレベルまで低下しています(図表17)。 他方、バランスシート調整が長引く中、今後、米欧でも、高齢化と生産年齢人口成長率の低下が進んでいきます。 そうした人口動態の変化が、経済の所得形成力を弱めていけば、各国でインフレ率の低下圧力が強まっていく可能性も考えられます。 4 発展途上国も含む全世界ベースでは、インフレ率と人口変化率の関係を横断的にみると、2000年代になっても、両変数の間に正相関の関係は観察されない。 5 この点については、木村・嶋谷・桜・西田 [2011]参照。 6 予期せぬ人口見通しの改訂が物価下落をもたらすメカニズムについては、Katagiri [2012]を参照。 経常収支 人口動態とマクロ経済のパフォーマンスとの関係で、最後に取り上げる論点は、経常収支への影響です。 この点に関しては、日本の2011年度の貿易収支が赤字になったことも手伝い、経常収支もいずれ赤字になるのではないかという議論が聞かれることもありますが、そうした見解は妥当しません(図表18)。 まず貿易収支について言うと、昨年度は東日本大震災に伴うサプライチェーン障害による輸出減少と、原子力発電所の事故に伴う火力発電の増加から液化天然ガスをはじめとする化石燃料の輸入増加が大きく影響しており、これらはいずれも永続的な要因ではありません。 経常収支は一国の貯蓄・投資バランスを反映しますが、貯蓄に関しては、ライフ・サイクル・モデルが示すように、高齢者比率が高いと、貯蓄率は低くなると考えられます。 他方、投資に関しては、少なくとも2つの経路を通じた高齢化の影響を指摘できます。 第1に、労働不足が生じて資本への代替が進む場合、国内投資が増加する経路です。 第2に、人口減少に伴う、国内需要の減少を受け、国内投資が減少する経路です。 高齢化に伴い需要が拡大する産業が資本代替の余地があまり高くないサービス産業だとすれば、第2の経路が支配的でしょう。 いずれにせよ、日本の所得収支は日本の対外純債権が253兆円、GDP対比50%以上であることを反映し、過去10年の年平均で12. 4兆円、GDP対比2. 5%の黒字を計上していることからみて、当分、経常収支の黒字基調には変わりはないとみられます。 日本は人口動態の変化に対応できるか? 人口動態の変化は、ゆっくりと長い時間をかけて日本経済に大きな影響を与えてきました。 今後も人口減少は継続し、先ほど説明した様々な経路を通して、当面、日本の経済成長率に下押し圧力を及ぼすと考えられます。 しかし、これを運命論として受け入れることは不適切です。 人口高齢化が経済に与える影響は、経済や社会の柔軟性次第で変わり得るものです。 問題は高齢化や人口減少それ自体からではなく、それへの対応への遅れから生じているものです。 私としては、人口動態の変化が引き起こしている問題を正確に認識し、そうした事態を変える必要があると社会が判断するのであれば、対応策はあるということを強調したいと思います。 以下では、そうした判断に立った場合、考えられる対応の方向性を述べてみます。 第1は、労働人口を増やす努力です。 この点では、外国人労働者の受入といった中央銀行総裁のマンデートを超えたテーマは別にして、出生率や労働参加率の引上げの努力が挙げられます。 興味深いことに、国際比較をすると、女性の労働参加率と出生率の間には正の相関関係があるほか、日本国内の47都道府県の間でも、育児期の女性の労働参加率と出生率の間には正の相関関係が観察されます(図表19)。 実際、近年、日本の女性や高齢者の労働参加率は着実に上昇しており、必要な方向に向けた努力は始まっています(図表20)。 第2は、需要パターンの変化に応じた供給面の対応努力です。 内需面での典型は、医療・介護といった高齢層の潜在ニーズへの対応です(図表21)。 過去10年間に、65歳以上の人口は日本では33%増加し、米国では16%増加しました。 同じ期間に医療・介護関連の支出は日本では11%増加し、米国では74%増加しました。 このことは医療・介護関連のサービスやそれを満たす医療機械等の設備という面では、日本における潜在需要は非常に大きいということを物語っているように思われます。 第3は、グローバリゼーションという大きな流れを最大限に活用し、海外需要を取り込む努力です。 もし日本が閉鎖経済であれば、人口減少の影響からは逃れられません。 しかし、日本よりも人口増加率が高い国、あるいは成長が著しい新興国の需要を中心に、海外需要を取り込むことによって、成長は十分可能です。 海外需要を取り込むという場合、輸出もありますが、日本企業の海外進出による直接投資収益も含めて、所得収支の黒字という形での海外の成長の成果を取り込む方法もあります。 2000年代の日本の実質GDP成長率の平均は0. 6%であるのに対し、実質GDP成長率と比較できるように、実質GNIから交易利得を除いたものの成長率は0. 7%となっています(図表22)。 ちなみに、この点では日本の対外直接投資の対GDP比率は、他の先進国と比べて際立って低い水準で推移しており、その引き上げ余地は大きいといえます(図表23)。 経済成長を議論する場合、通常は生産活動が行われる場所に着目して、GDP概念が重視されることが多い訳ですが、所得収支の黒字が増えてくると、自国の国民の稼ぐ所得に着目したGNI概念も重要になってきます。 第4は、以上3つの努力を行う過程で、資本の最適配分を行う努力です。 日本の労働生産性の伸び率については先ほど言及しましたが、労働生産性の水準自体は他の主要先進国に比べても低いものとなっています(図表24)。 このことは逆に言えば、資本の最適配分を行えば、一人当たりの所得水準はかなり上昇する余地があることを物語っています。 おわりに 以上、人口動態の変化が日本経済に様々な影響を与えていることを説明してきました。 振り返ってみると、世界的な信用バブル崩壊が起こるまで、バブル崩壊のもつ深刻な意味は学界でも政策当局者の間でも十分な理解がなく、日本の経験は日本に固有の出来事と片付けられる傾向がありました。 同様に、急速な高齢化や少子化のもつ意味についても、この問題のもつ重要性と比較すると、必ずしも十分な理解があるようには思えません。 しかし、ウィリアム・ぺティの「政治算術」やマルサスの「人口の原理」を持ち出すまでもなく、経済学はもともと人口問題を研究対象としていました。 経済政策の立案にあたっては、人口動態の変化とその政策含意に関する基礎研究が欠かせません。 今回の会議が、そうした基礎研究の蓄積に貢献することを期待して、開会の挨拶に変えたいと思います。 ご清聴ありがとうございました。 参考文献• 木村武・嶋谷毅・桜健一・西田寛彬、「マネーと成長期待:物価の変動メカニズムを巡って」、『金融研究』第30巻第3号、日本銀行金融研究所、2011年、145〜165頁• 白川方明、「グローバリゼーションと人口高齢化:日本の課題」、日本経済団体連合会評議員会における講演、2011年12月22日• 平田渉、「人口成長と経済成長:経済成長理論からのレッスン」、『金融研究』第31巻第2号、日本銀行金融研究所、2012年、121〜162頁• 開閉ボタン• 開閉ボタン• 開閉ボタン• 開閉ボタン• 開閉ボタン• 開閉ボタン• 開閉ボタン• 開閉ボタン• 開閉ボタン•

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【挨拶】白川総裁「人口動態の変化とマクロ経済パフォーマンス」(日銀金融研究所主催2012年国際コンファランス) : 日本銀行 Bank of Japan

白川 日銀 総裁

総裁の看板もついに……。 (「日銀HP」より) 昨日3月7日、 日本銀行の 白川方明総裁のもとで開かれる最後の金融政策決定会合が開かれた。 8日付の日本経済新聞は、国債買い入れの逐次増額が「後手に回っている」という印象を深め、また戦後最高値を記録した円高にも「果断な対応が遅れた感は否めない」としながらも、リーマン・ショックや東日本大震災、欧州債務危機などに直面しながら、金融システムの安定を守り抜いたと評価。 「日本の金融機関がいま、欧米勢が撤退したアジア市場に乗り込み、成長戦略の先陣を担う環境を維持したのは白川日銀の功績だろう」とまとめている。 より好意的な分析をしているのは、産経新聞だ。 白川氏は金融政策の専門家が集まる国際舞台で、日本のバブル崩壊の経験や、デフレ克服に向けて社債などのリスク資産も買い入れるなど非伝統的な緩和策に先鞭を付けた知見を披露しており、その専門知識と分析力は「各国の中銀関係者が舌を巻くほど」(日銀幹部)だったという。 同紙は、リーマン・ショック後の金融危機を受け、米連邦準備制度理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)などが迅速な金融緩和に舵を切れた背景にも、白川氏の知見が生かされていると分析。 結果が問われる最高責任者の顔と、金融・マクロ経済の専門家としての顔のどちらに目を向けるかで評価は変わり、市場からは「本来だったら、最高の副総裁になれたはず」との声が漏れていると締めくくっている。 5年前、参院で多数の民主党が政府の日銀人事案に反対する混乱のなかで、副総裁候補から総裁に「祭り上げられた」(同紙)白川氏への同情も垣間見える内容だ。 他方で、専門家からは手厳しい意見も多数寄せられている。 朝日新聞にコメントを寄せた中原伸之・元日銀審議委員は「『失われた20年』生んだ」と辛辣だ。 「白川総裁はデフレに有効な政策を打てなかったにもかかわらず、海外では『(日銀は)孤独な先駆者』と自画自賛した」「自らの理論にこだわり、異なる意見に耳を傾ける謙虚さに欠けていた」「円高やデフレで人々の暮らしは苦しくなったのに、傍観者的立場に終始していた」など、強く批判する言葉が並んでいる。 また、「『脱デフレ』宿題残す」との見出しで5年間を振り返っているのは読売新聞。 クレディ・スイス証券チーフエコノミストの白川浩道氏が、「デフレ脱却に向けた取り組みは不十分で評価できない。 円の価値の維持や日銀バランスシートを重視するあまり、残存期間が短い国債の購入に偏った。 その結果、デフレが解消できなかった」とまとめた。 ブルームバーグは8日の記事で、株式など資産市場が白川総裁の退出を好感し、アベノミクスのもとで日銀に送り込まれているリフレ派の正副総裁を歓迎していることを伝えながら、「しかし、長く日銀を間近に見てきたエコノミストの間からは、その評価を断じるのは時期尚早で、歴史に委ねるべきだという声も上がっている」としている。 各メディアがどっちつかずの評価を下しているのも、比較的容易に日本経済の風向きが変わり得る現在の状況を見てのことだろう。 アベノミクスの成否が、白川総裁の評価を分けることになりそうだ。 (文=blueprint).

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歴代総裁 : 日本銀行 Bank of Japan

白川 日銀 総裁

白川方明(まさあき)・前日本銀行総裁が辞任から5年半を経て沈黙を破った。 10月22日、日本記者クラブで記者会見し、断り続けてきた金融政策への取材に初めて応じた。 現在の異次元緩和への直接的な批評は避けつつ、「金融政策では、日本経済の根本問題を解決できない」と強調。 今月出版された著書の内容も合わせ、かつて日銀を担当した記者がその「心の叫び」を読み解いた。 (大日向寛文) 「日銀をやめて5年半が経つが、マスコミを前にした講演やインタビューは全てお断りしてきた」。 白川氏は会見でそう切り出した。 その10日前、800ページに迫る大著「中央銀行 セントラルバンカーの経験した39年」(東洋経済新報社、税込み4860円)を出版したばかり。 当初は出版に否定的だったという。 会見ではこう語った。 「何を書いても自己弁護や他人への批判と誤解される」 なぜ考えを変えたのか。 白川氏….

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